南の国の物語(ベトナムの神話より)
むか〜し、むかし、南の国に、「アン・ズォン」という王さまがいました。海のように広がる池のふもとで、「人々が平和に暮らせるにはどうしたらよいのだろう?」と祈り、瞑想をしていると、亀の姿をした神「キム・クイ」が池の中から現れました。
「この池のふもとから螺旋の階段を持つ城を建てなさい」
そこで、アン・ズォン王は、そのとおりに城を建てると、とても誰にも攻め入ることのできない「コーロア城」が出来上がりました。
王は、人々と手を取合ってよろこびました。
アン・ズォン王は、コーロア城の完成を感謝して、螺旋階段を降り、池のふもとで、祈りを捧げ、瞑想をしていると、再びキム・クイ神が池の中から現れました。
「私の爪から弓を作りなさい。その弓は、一矢で千人を倒すことができるだろう。」
キム・クイ神は、自分の亀の足の爪をアン・ズォン王に与えました。そこでアン・ズォン王は、そのとおりに弓を作ると、とても強い弓ができました。
人々は、その国で、田を耕し、仕事が終わると、歌を歌い、そして踊り、楽しく、平和に日々を暮らしていました。
ある日、南の国よりもはるかに大きな力を持った北の国が攻めにきました。
しかし、固いコーロア城は崩れず、キム・クイの爪から作った弓で、一度に千人の兵士が倒れてゆくのを見て、攻め入った北の国の「チョー・ダ」王は、アン・ズン王に休戦を申し込みました。
そこで、チョー・ダ王の息子「チュン・トォイ」は、アン・ズォン王の娘「ミィ・チャウ」と結婚することになり、チュン・トォイがコーロア城にやって来ました。
華やかな結婚式が、行われ、人々は踊り、歌い、ふたりを祝福しました。
ふたりは、仲良く暮らしました。
ある日、父のアン・ズォン王が狩りに行っている間に、チュン・トォイは、妻のミィ・チャウから弓のある場所を教えてもらい、それを自分の弓とすり替えてしまいました。
お彼岸の日、チュン・トイは、祖先の供養をするために、北の国に帰らなければならないにと妻のミイ・チャウに言いました。
「もし、万が一、戦いにでもなったら、どうやってお前を探せばいいのだろうか?」
「戦いが始まったら、私は鷲鳥の羽で作った着物を来て、その羽をひとつずつ落としてゆきます。それを探して私を見つけ出して下さい。」
チュン・トイが帰ってほどなく、北の国は、再び戦いを仕掛けてきました。
娘は夫の裏切りを悲しみました。
アン・ズォン王が敵に弓を引いても、敵は一人しか倒せません。じわじわと、北の国に攻め入られてゆきます。
その夜、亀の姿をしたキム・クイ神が再びアン・ズォン王の前に現れ、「おまえの娘が、弓のありかを敵の王の息子に教えたからだ」と告げました。
王は、娘の裏切りに怒り、娘を斬り殺しました。
そして、娘を殺したことを嘆き、自殺しました。
チュン・トイは、誰よりも先に城に入り、鷲の羽を追ってゆきました。しかし、そこで見たものは、無惨に殺された妻の姿でした。
チュン・トイは妻を抱いて、池の中に入り、自らの命を終えました。
その戦いの後、池から続く海には、真珠がたくさん採れるようになり、人々は、ミィ・チャウは真珠になったと言うようになりました。
その真珠をかつてのコーロア城のふもとの池で洗うと輝きが増すと言われ、池のふもとの人々は、海で採った真珠を村に持ち帰り、真珠の首飾りをつくる村として、人々に知られるようになりました。
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