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2009年1月25日 (日)

スモーキー・ザ・ベア・スートラ

 1994年、この年ACC(アジア文化交流基金)の奨学金を得て渡米したのは私、そして来日したのは、ピーター・ガーランドだった。
  私が渡米する1週間前にガーランドは来日した。彼は当時、ニューメキシコに住んでいた。「アメリカに行ったらどこに行って、何をするんだ?」「アリゾナに行き、ナバホ自治国でナバホ語を学び、ナバホの音楽を聴こうと思っている。」「いつナバホへ?」「7月から」すると彼はおもむろに紙とペンを出し、「7月1日○○で、○○の祭り」「7月2日○○で○○の祭り」と、サウス・ウエストに住む、それぞれのネイティブ・アメリカンの「部族の祭りと行事」を克明に書き出した。つまり、彼は、ニューメキシコに20年近く住んでいる間に、ありとあらゆるネイティブ・アメリカンの芸能を見て来たわけだ。
 彼は、私をこのように讃えた「アメリカ、と言うと人々は、現代音楽だ、コンピューター音楽だとニューヨーク、サンフランシスコへと赴き、誰ひとり、ネイティブ・アメリカンの音楽を聴こうとはしない。あなたは、私が会った初めてのネイティブ・アメリカンの文化、音楽に興味を持ったアジア人だ」
 それは、彼にとって、ことのほか、奇妙なことであっただろう。私たち日本人は、あらゆる面で、ネイティブ・アメリカンとつながった神話を持つ、「古い兄弟」であるのに、そのことに誰一人振り向こうとしなかったのだから。 
 彼は、アメリカにおいても、意識的に都会に住むことに抵抗してきたアーティストだ。
「なぜ、アーティストが都会に住むのか?それは、作品を作る目的が、「都会で成功すること!」であり、音楽を愛する行為ではないからだ。」
「『成功するための音楽?』を作曲することほど、志の低い芸術活動があるだろうか?」
「どこに住むか?それがどのような作曲をするのか?ということだ」
「マジョリティーのための音楽を作りたければ、都会に住むがいい。もしマイノリティーの音楽を表現したければ、マイノリティーの場所に住まなければならない。」
 彼の目指す、芸術的姿勢は、まさしくポール・ボウルズ(1910〜1999)だった。
彼は、来日しても東京を嫌い、すぐさま北へと向かった、佐渡島から、再び本州の日本海側を西に下り、最後に京都、そして奈良にたどり着いた。彼がちょうど奈良に着いた時、そこでは東大寺のお水取りが行われていた。ガーランドは、そこで吹かれる「法螺貝」に、いたく感銘を受けたようだ。「いつか法螺貝の曲が書きたい」彼の日本からのはがきにそう書いてあった。
 それから、15年経った。幸いにもガーランドとの交流は続けられ、彼は「アメリカの声明」を作曲した。それが「スモーキー・ザ・ベア・スートラ」だ。
 法螺貝→熊、祈り→声明。そして経典は、自然派と呼ばれ、ビートニック時代の詩人、ゲーリー・スナイダーの「スモーキー・ザ・ベア・スートラ」によった。彼は、アメリカに蔓延する「仏教」の代表的イメージである「禅」から「密教」へとスライドさせることにより、アメリカ大陸のアニミズムをロッキー山脈の「熊」に託した。
 彼の作曲のスタイルは、一般には「ポスト・ミニマリズム」と言われる。しかし、その中に、アメリカのサウス・ウェスト(西南)の荒涼とした砂漠、しかし、人影のようにおどけて見せるサボテン、遠くから聴こえるコヨーテは、決して私たちから遠い存在ではない。峡谷に日が暮れるのを眺めながら、そこに空いた住居穴からフルートを吹くアナサジの人々で出てくるかもしれない。そんな音が風となって、私の顔をかすめて吹いてくる。それこそ、彼のライフ・スタイルが音となって現れる。彼は作曲家として、彼の思想を音として表現することに、人生をかけて成功した人だ。

「紫燈護摩(さいとうごま)」と「スモーキー・ザベア・スートラ(ピーター・ガーランド作曲 世界初演)」
月日:2月1日(日)
時間:15:00〜16:00紫燈護摩
   17:00より「スモーキー・ザ・ベア・スートラ」
場所:大徳寺本堂1階 (川口市道合1221)http://www.daitokuji.or.jp/
出演者:桜井真樹子、藤木友美(声明)、井川仁水、斉藤説成(法螺貝)、神田佳子(テンプル・ベル)、加藤亜依(チューブラ・ベル)、篠田浩美(バス・ドラム、ウッド・テンプル・ブロック)、亀井博子(バス・マリンバ)
紫燈護摩:円蔵院流修験道の会
料金:「紫燈護摩お札祈祷料・ごま木」と「スモーキー・ザ・ベア・スートラ」 5,500円
   「スモーキー・ザ・ベア・スートラ」のみ 当日2,000円 前売り1,800円
その他:「スモーキー・_ザ・ベア・スートラ」のみの方も紫燈護摩見学できます。
    紫燈護摩「火渡り」も、一般参加出来ます。
    車でご来場の方は、問い合わせ先(大徳寺)までご連絡下さい。 
問い合わせ先:jitie@alo.com 048-283-9310 (大徳寺)
主催・企画:スモーキー・ザ・ベア・スートラの会

「柴燈護摩」は、今回のガザ侵攻によって亡くなられたすべての人々の慰霊のために行われます。

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