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2008年3月21日 (金)

森に消えた子どもたち

 「足の凍ったおじいさん」に続く作品。
 「最北の国の人々」は、やがて大和に滅ぼされることを知っていた。大和の闘いで、最北の国の武人たちは、みな死んでいった。今や残されたのは、老人、女、子どもたち。彼らは、戦うことを知らない。ただ、行き先もわからず、その場を逃げるしか、生きる術を知らない。

 もし、征服されたら、人々は、朝廷に年貢を収め、その国の歌を献上しなければならない。
 今でも、宮内庁楽部には「催馬楽(さいばら)」という管絃付き歌謡が残されている。「山城」「葛城」「美作」「美濃山」「飛鳥井」「走井」「伊勢海」など、各地の名がつく歌は、おそらくその土地となんらかの関係がある曲であろう。
 他の国の歌を、歌う。そこには、自分の暮らす国の風情とは、異なる趣があり、その土地に、思いを寄せてみたりする…エキゾチック(異国情緒)…これは、貴族の趣味。今では、そこに何の琴線を感じなければならないのか、と言うのかもしれない。
 しかし、「ことば」や、そのことばから生まれた「歌」は、そのことばを話す人々の宝だ。それを、「中央」からみた演奏方法で歌うことこそ、征服の象徴だった。
 アメリカの中部で、日本人が一人で歩いていると、中国語とも、何語ともつかぬ、彼らなりの解釈で、それらしきイントネーションをつけた「罵声」を、ハイスクールのグループが、車で通りすぎる瞬間に、「私」に吐いてゆく。その行為に、被差別と屈辱を感じるのは、彼らが「日本のことば=私の宝」を恥辱したからだ。
 「アンビエント・ミュージック」がそうだ。イギリスの植民地だった国の音楽、歌に、ヨーロッパの音楽用語のひとつである「コード(和声)」を乗せて、イギリス人に理解のできる音楽として、解釈を加える。「コード」によって噛み砕かれたその歌は、イギリス人のための歌へと変わっていった。
 もともとの国の人々が歌に込めた魂、メッセージ、伝えたいことばは、その(イギリス)人には、必要ではない。いや、反対にそのようなものが、その歌になるならば、それは「コード」のよって薄めてゆかなければならない。
 ひと昔前の、音楽家なら経験したことがあるだろう。他の国の音楽や舞踊を学ぶとき、そこでは、録音や録画は、許される行為ではなかった。学ぶなら、私たちの「言語」を理解しろ、自分の身に沁みるまで、自分がその国の人となるまで通いつめろと。
 それが、「足の凍ったおじいさん」「森に消えた子どもたち」の共通のテーマだ。
 反対に言うなら、今問題のパレスチナ問題。イスラエル人(=ユダヤ人)は、多くのパレスチナ人の土地を奪い、そこに既成事実を作りあげ、イスラエル国家を存続させている。彼らは、国を欲した。それが「諸悪の根源」だ。かれらは、1900年前からのディアスポラ(離散)を、現在も永遠にすべきだろうか?
 なぜ、1900年前にディアスポラし、様々な混血を繰り返しても、今でも彼らは「私はユダヤ人だ」と言うのか?それは、「ユダヤ人だ」と言う人が、ユダヤの言葉(ヘブライ語)を失わなかったからだ。正確に言うなら、彼らの聖典に書かれた文字を、歌うことによって受け継いできたからだ。彼らがユダヤ人であることを鮮明に記憶していなければ、シオニズム(故郷の再建運動)を実現するエネルギーは生まれなかっただろう。彼らのシオニズムの力を失わせたければ、彼らからその言葉、歌を取り上げることだ。
 文化を取り上げること、それを、人は人にできるだろうか。

 人は、自分のことばを失うことは、できるのだろうか?
 以前、神職をしている者に「日本人はなぜ殉教しないのか?」と聞いたことがある。彼は「なぜなら命は大切だからです」と答えた。
 1)大切な命を守るために、人は征服者に服従するのだろうか?
 2)命を守るために言葉を、歌を捨てることはできるのだろうか?
 3)平和のために、人は、言葉を、歌を捨てなければならないのだろうか?

 言葉を捨てなくても、滅びてゆく人々もいるだろう。しかし、服従し、平和に滅びるのではなく、服従しなかったが、敗北して滅びる。これが、人類の滅亡の道のりのように思える。
 あるいは、「服従せずに滅びた風景」は、実は滅び、種となって地上に撒かれ、新たなる命を与える。
 それは、多くのイスラエルの預言者が歌ったことばだ。
 「雨も雪も、ひとたび天から降れば、むなしく天に戻ることはない。それは、大地を潤し、芽を出させ、生い茂らせ 種撒く人には種を与え 食べる人には糧を与える。
 そのように、わたしの口から出るわたしの言葉も むなしくは、わたしのもとに戻らない。それはわたしの望むことを成し遂げ わたしが与えた使命を必ず果たす。」(イザヤ書55章10,11節)

「3月の語り物+映画」
 
日時:2008年3月21日(金) 19:00開演
 チャージ:1,500円(ドリンク付き)
 
場所:江古田フライングティーポット TEL:03-5999-79971
 練馬区栄町27-7 榎本ビル B1F
 
プログラム
  
「茗荷谷純情アパート」姉妹ユニット「橋本ヘイデロゥ」(壽山美科 壽山華月)
 映画「理想の幻日」2007年(荒井満耶監督) 出 演:賃貸人格ほか、
 
「森に消えたこどもたち」桜井真樹子+徳久ウィ リアム幸太郎

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